雪洞A入口 阿見1ベンチャーの印の氷旗

間食は定番のギョニソ

雪洞の中。手にはギョニソ。

食事の後片付けはこんな感じ

雪中キャンプ

-20℃でタラリラッタ、リッタラッタ、ラッタッタァ!

 

第3話 檜原湖 de  オ、オバケ?!!。

第1回、第2回とナンの苦労も困難にも遭遇せずに、のほほんとした雪中キャンプを体験してきた我々は、翌年、更に調子に乗って第3回の雪中キャンプに突入した。今回のテーマは「雪洞づくり」と「わかさぎ釣り」。そのため、今まで以上に雪深く&湖のあるところに行くことにした。しかし、相変わらずリサーチ&調整能力のない我々は、結局「まー、ここでいがっぺ」ということになって、檜原湖畔のキャンプ場に行くことになった。
 そんなワケで

いきなり問題の発生となった。そこに行って初めて気づいたのだが、「湖畔のキャンプ場」である。湖面を伝って来た風がモロに吹き付けているのであった。キャンプ場にチェックインして、管理人に雪が避けられて、雪洞作りに適したところがあるかどうか尋ねたところ、キャンプ場の外だけど500mほど先に林があってそこでキャンプしても大丈夫ということだった。ロケハンをすると、ちょうど吹きだまりになっていて雪が深く、風もほとんど来ないことがわかり、そこで2泊することにした。水とトイレはキャンプ場のものが使用できるので安心だ。

設営を終えて、まず最初の目的である「雪洞」作りに取りかかった。雪洞といっても、積雪の関係から、あまり高さは稼げないので、人が座って中で過ごす構造にした。作り方は3m程離れた位置にAB2つの入口を設けて掘り始め、それを中で連結させることとした。

はじめチョロチョロ、中パッパ。・・・あ、飯炊きのことではないよ。はじめは穴を掘ったら天井の雪が落ちてこないか・・と恐る恐る作業を始めたが、大丈夫だと思うと、一気にパワーを投入しガンガン掘り進めていった・・・・・・のは10分程度。辛い。息が上がる。直ぐにヘロヘロになって、次にバトンタッチ。また、10分後にはヘロヘロになったのが出てきてバトンタッチ。結局ABの連結までに2時間、大人5人が過ごせる大きさになるまでは6時間もかかってしまった。

なんでそんなに辛いのか。それは立っても座っても作業ができないからで、ほとんど寝転んだ状態で掘り進めていたからである。 なぜ? そりゃ広げるよりも掘り進みたいのが人情でしょ。まーこのアタリにも計画性のなさが露呈しているワケなのだなぁ。

掘った雪は、ブルーシートにのせて外に運び出す。この作業もけっこうつらいものがあった。そして隣との壁が薄くなり、いよいよ開通か!! ふつう開通したときは「お祝い」になるハズなんだが、この時は違っていた。ABそれぞれチームを組んで作業をしていたが、先輩後輩の位置づけは絶対であり、先輩Aチームが、その壁をぶち破って見事開通。先輩Aチームは「バンザーイ!」。反対側に大量の雪が崩れ落ち、後輩Bチームはぶんむくれ! そこに開通の握手はなかった。

それからは、拡張作業。天井を掘り、床を掘り、壁を掘り、椅子とローソク置き場を作る。天井部分は崩れ落ちないように十分かつ一定の厚みを持たせなければならない。そのため外側から、長さ50cm の棒をいくつも刺し、中からそれが見えたところで掘るのを止める。これでちょうど50cmの天井ができた。続いてシェラカップで天井の表面をなめらかにする。そうしないと溶けた雪の雫がそこかしこに落ちてくるからだ。この頃になるとAB両チームの関係も修復されていた。

作業が終わった頃には、すっかり日が暮れていた。ろうそくを点けて壁に掘ったろうそく置き場に置くと、それだけで雪洞の中が十分に明るくなった。光が雪の壁に反射して広がるからだ。七輪をそこに持ってきて据える。そういえば、雪洞作りに夢中になってお腹が空いたことを忘れていた。そこで、取り出したのは、ボーイのキャンプ定番の食材であるギョニソこと魚肉ソーセージ。うまかったぁ。そして、なぜかアタリメ。それを七輪で炙るが、その臭いが充満して・・・・。

 

晩ご飯も済ませ、雪洞作りで疲れ切った我々は早々に寝床に入った。
 しばらくしてMに起こされた。「外で変な音がするんです!」

Nは「ん?」と耳をそばだてると、確かに聞こえてくる。あの怪談によく使われるあの効果音そのものが。

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ〜」

顔を見合わせる2人。その隣では爆睡している2人。

「M、見てこい!」

「え?!!!」

「ほら、さっさといってこい!」
しぶしぶシュラフを這い出て、テントに入口から頭だけを出して、周りを見回すM。

「さっさと外出て、確かめてこい!」

「わかりましたよ!」
不満たらたらで外に出るM。しばらくして帰ってくる。
そのとき、テントの中はえも言われぬ冷気が漂っていたのである。Nはシュラフの中に頭を突っ込んで震えていた。帰って来たMはテントの中を見て

「あ!!!!!」

 


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さてさて、それでは「その2」の続きに参りましょう。

そうそう「食事」の話だったね。

雪を掘っただけのテーブルと椅子。当然、そこに直に座るとおシリが冷たい。ダンボールを敷くだけで劇的に冷たさから解放される。しかし我々は賢かった。いや、同行したもう1人のそのリーダーが賢かった。

今でこそ、ウレタンフォームのアウトドア用座布団が販売されているが、その頃にはそんなものはなく、あってもシーターポンがあるくらいの頃の話だ。キャンプ場に行く途中によったスーパーで、そのCリーダーは、とあるモノを買った。今は無いかもしれないが「バスマット」という1.5cm厚の発泡ウレタンのマットである。そのCリーダーがそれを買っているときは、キャンプマットの代わりに使うのかな・・・程度に思っていたが、彼は食事の時にそれを持ってきておシリの下に敷いたのだった。

「うん! よし!」
と納得してそれをはずしたと思ったら、6つの切り分けて、我々に与えてくれた。Cリーダーが神様に見えた。そのバスマットの座布団はダンボールの数十倍?の効果で、我々の食生活?を豊かにしてくれたのだった。

 

食事をすれば、当然食器は汚れ、それを洗わなければならない。そんな時、七輪で常に沸いているお湯が役に立つ。日本の伝統的なエコの知恵、食べた器にお茶を注ぎ、汚れを落として飲んでしまうというアレだ。特に食器洗い係になるとこの伝統の素晴らしさが分かる。基本的に、鍋に使った器は、それ以上洗わないで、各自で管理し、次の鍋の時に使う。それ以外の汚れた食器だけを洗うのである。そんなときは、トイペでまず汚れを拭き落とす。食器洗いは、バケツに雪を入れて、お湯を注ぎ、ぬるま湯にしてそこで洗う。なので、できるだけ汚れを取らないと、何度も洗い水を作ることになる。それも大変な作業なのだ。汚れを拭いたトイレットペーバーは、そのままだとゴミになるが、七輪で燃やせば灰となる。どうせ練炭の灰がでるので、それと一緒に持ち帰れはいい。割り箸や他の燃やせるゴミもこうして燃して灰にしておく。

また、食器を洗うときは洗剤は使わない。汚れは、お湯とトイペでほとんど落ちてしまうから。次の食事に支障の無い程度に軽く洗うだけである。洗うときはゴム手袋と柄付きのブラシがいいね。

 

また余談になるが、七輪は本当に役にたつ。例えば鮭の塩焼きをしたとき、鮭の皮を七輪で焼いて醤油をたらせばおかずになるし、遊んでお腹が空いたら、網を載せて餅が焼ける。スルメを焼いたり、ししゃもを焼いてもいい。ヤカンには常にお湯が沸いているから、カップラーメンも食べたいときにすぐ食べられるし、コーヒーも紅茶も、ココアも、カップスープもいつでも飲める。本当に優れモノだ。

 

 

次は、テントの雪対策に移ろう。

昼間は、起きているわけだから、雪が積もっても対応できる。しかし、夜、寝ている時に降る雪への対策はどうするか。

我々は「雪当番」を設けている。一応3時間毎に目覚ましをかけて、その当番がテントの屋根をテントの中からワサワサと揺するのだ。我々のドームテントのフライの材質は、ポリエステルで表面がなめらかなので、だいたいこれで雪は落ちていく。問題は雨や水がフライに付いて、それが凍りついた上に雪が降った場合だ(テントの中が温かくなりすぎるとフライの表面について雪が取れて凍ることもある)。テントの屋根を下からワサワサと揺すれば、だいたいの雪は落ちるが、凍った氷は全て落ちずに残っていることが多い。そんな時は、目覚ましの間隔を縮めて2時間ごとに雪下ろしをすることになる。今は、防水スプレー(正式に撥水スプレー)があるので、それをフライにかけておけば、それはほぼ防げるか。テントの周囲に積もった(落ちた)雪は、なるべく早めに、雪が軽いうちに掘って取り除いておく。積もれば積もる程締まっていき重くなり、そうなると余計な力が必要となるからだ。

また、ジャンテンや班用のAテンのフライは、同じポリエステルなのだが、織り糸の細さや織り方が、ドームテントとは異なり、表面はさほどなめらかではない。そのため、雪が付着しやすく、また滑り落ちにくい。さらに、あれだけの面積があるので、いくら払っても付着した雪だけで相当な重さになる。よほどの積雪でなければジャンテンのポールが折れることは無いとは思うが、だからといって積雪を甘く見ていると大変な目に遭うから注意しよう。Aテンのポールは、さほど丈夫にはできていないので、こまめに雪下ろしをすると同時に、フライに雪が付着しないよう常に気を配る必要がある。まぁ、Aテンは使わないにこしたことはない。

テントの雪下ろしには、自動車用の柄の付いたスポンジとゴムのヘラがついているスクレーパーが重宝する。

 

 

さて、次はアクティビティ編だ。

ここでは、スキー、スノボ、スノーシューなど、お金がかかるものは取り扱わない。もっと身近で手軽なものを紹介していこう。

 

まずは「ソリ」。

これは運搬に使ったモノだが、当然本来の使い方は「遊び」用である。1人1台が原則だ。その遊びとは「レース」もしくは「タイムトライアル」となる。斜面あればそこが即レース場になる。勝つためにいろいろな工夫をするとマスマス楽しくなる。ある者は載ったときの重心の位置を工夫したり、乗り方を工夫したり、スキーのワックスを塗ってみたり、マヨネーズを塗ってみたり?、その工夫が笑いを誘う。

 

続いては、「人間リュージュ」。

これは最初の年にソリを持っていけなくて編み出された遊びだ。適当な斜面にスコップで溝を掘ったり、埋めたり、側壁を作ったりしてコースを作る。途中にジャンプ台や急降下など、知恵を出し合って楽しいコースを作る。そのコースをシュレッダーの透明で厚みのあるビニール袋に中に人が入って滑り降りるのだ。身体を丸めて袋に入るので、直進性が悪く、コマのように回りながら滑り落ちてくる。後ろ向きになったときにジャンプ台に差し掛かると悲惨な目に遭ったりする。これはホントに楽しい。身体とコースは、ビニールの幕1枚なので、ダイレクトに凸凹が体に響いてくる。スタートからゴールまでの時間と、飛形点ならぬ滑走点で総合点数を出して競うのだ。

 

その次は、「雪上ゴルフ」。

子供用のおもちゃのゴルフクラブとウレタンのボールを使う。クラブは1本あればみんなで使い回せるが、ボールはプレーヤーの数だけ必要。コースは全くのフリー。カップの代わりに、立木を指定して、それにボールを当てる。何回で当てられるかを競う。最も少ない回数で当てたモノが、次の「木」を指定する。雪の上だといろいろなハプニングが起こるので、これまたとても楽しい。

 

そして「ワカサギ釣り」。

これは遊びと実益を兼ねたものである。近県だと群馬の赤城大沼や檜原湖などが氷の穴釣りができる。ワカサギ釣りは簡単なようでなかなか難しい。回遊魚なので、回遊する深さ(タナ)を把握しないと、全く釣れない。

釣ったワカサギは、素焼かフライにして食べる。
 貧乏・・・いや質素な我々は、風に吹かれながら釣ったが、リッチな釣り人はテントやシェルターのなかで釣っている。フン!

 

それから「クロスカントリースキー」。

これを履いていると、長靴では雪に埋もれてしまい入り込めない林の中などにもズカズカと入っていける。このスキーは、ちょうどバインディングのあたりのソール(雪と接する面)が鱗状になっていて、上り斜面を登ったり、スケートのように平地を滑ることができる。但し、全長が長いので、取り回し特に右折・左折・転回は木に当たってしまい苦労する。しかし、スノーシューのようにガニマタにならずスマートだし、下りはスキーなので滑って降りられる。ただエッジがついていないので、特殊なテレマークターンというテクニックが必要となるが、それはけっこう簡単に修得できる。スノーシューの歩が自由度は高いが、下りもエっさホイさと歩かなければならない。

第2回の南蔵王では、移設が無料でクロカンスキーを貸してくれた。

 

最後は「雪合戦」ならぬ「スノースナイパー・ゲーム」。
 これはチーム編成ができる人数が必要だ。最低でも5人×2チームの10人。この位いないと面白くない。近年は「雪合戦」ならぬ「YUKIGASSEN」としてルールが整備され、国際大会も開かれている。阿見のベンチャー隊はそんな人数はいないので、こんなゲームを作り出した。

このゲームはスパイ対守備隊の対戦ゲームだ。守備隊の陣地に沿って、近づいたり離れたりの30〜50mほどのコースを作る。ゴールには棒の先にバンダナのフラッグをつけた旗竿が刺されている。守備隊は雪玉を好きなだけ作って、陣地内の各所にそれをデポして待ち受ける。そして、スパイも守備隊も、それぞれのスタート地点で待つ。

笛の合図で、両者一斉にスタートし、スパイはフラッグを奪いに走る。守備隊は雪玉のデポ地点に急ぎ、走ってくるスパイに陣地内から雪玉をぶつける。スパイが雪玉をぶつけられたらアウト。フラックを奪い取れたらセーフ・・・という単純なゲームである。これだと4〜5人でも実施可能だ。

ポイントは、スパイの走るコース。守備隊の陣地にほどよく接近し、また離れるコースがいい。途中安全地帯を設けてもいいだろう。また、守備隊はフラッグを中心とした半径10m以内には入れないようにすることも肝心だ。

2チームで対戦してもいいし、スパイを1人、残りは守備隊にしても面白い。


・・・とだいたい雪中キャンプの様子を書いてみた。

書き始めると、次から次といろいろなことが思い出されてくる。
もっと細かいところのノウハウも沢山あるが、あまり書いてしまうと、それにとらわれてしまい自由な発想を妨げてしまうと思われるので、このあたりで止めておこう。

 

この当時の阿見1団ベンチャー&ローバー隊は、いい意味でのおバカが揃っていたので、実に多彩で楽しい沢山の活動をすることができた。その精神は今も何ら変わらない。

ただ1つの問題は、それがどうにも進級に繋がらなくて、隼はもちろん、富士もお目にかかったことがないということ。それはそれで大きな問題?であるが、まーそれも有りだろう。中味のない活動で、いくら隼や富士をとっても(とらせてもらっても)、単にそれだけのこと。もちろん進級することは大事だが、それ以前に「人」としてどうあるべきか、どう動くことができるか、ができていなければ、まったく意味を持たない。

なんか、負け犬の遠吠え…にしか聞こえないが。それが阿見1団のベンチャー・スピリッツなのである。(?)

 

平成28年2月。久々に雪中キャンプができる。
 いまからワクワクしている。

 

あ、ひとつ書き忘れた。

この「その3」の頭書のエッセイ

「あっ!!!!!」

・・・・の続きである。

 

 

晩ご飯も済ませ、雪洞作りで疲れ切った我々は早々に寝床に入った。
 しばらくしてMにつつかれ起こされた。「外で変な音がするんです!」

Nは「ん?」と耳をそばだてると、確かに聞こえてくる。あの怪談によく使われるあの効果音そのものが。

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ〜」
顔を見合わせる2人。その隣では爆睡しているSとK。

「M、見てこい!」

「え?!!!」

「ほら、さっさといってこい!」
しぶしぶシュラフを這い出て、テントに入口から頭だけを出して、周りを見回すM。

「さっさと外出て、確かめてこい!」

「わかりましたよ!」
不満たらたらで外に出るM。しばらくして帰ってくる。
そのとき、テントの中はえも言われぬ冷気が漂っていたのである。Nはシュラフの中に頭を突っ込んで震えていた。戻って来たMはテントの中を見て

「あっ!!!!!」
そこでMが見たものは、シュラフ中から覗いているNの怒りの目だった。そう、Mはテントの扉を開けっ放しにしていたのだった。そんな行動をとることで、不満&怒りの気持ちを収めていたのだろう。しかし、ほんわか暖まっていたテント内の空気は、外気と同じ温度(氷点下20℃くらい)に下がって、寒さのあまりNはシュラフの中に頭を突っ込んで震えていたのだ。してやったりのMだった。

だいたい、オバケが出るときに、わざわざ

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ〜」
という効果音を立てるわけがない。そんなこと冷静に考えれば分かることだろうが・・・・。ったくぅ(笑)。

それで、その音の正体は・・・というと、 それは村田隊長・・・あ、いや、Mに聞いてみよう。

 

(完)

 

◀◀第1話

◁◁第2話

 

ここは、雪中キャンプのアクティビティ編の第3話